セルフサービスBI導入前にチェック!運用時に起きがちな3つの課題

セルフサービスBI導入前にチェック!運用時に起きがちな3つの課題

BIツール

現場が自ら自由にレポート作成やデータ分析を行える「セルフサービスBI」を導入する企業が増えています。セルフサービスBIを導入した企業では、業務の効率化が進み、新しい発想が生まれやすくなるメリットを発揮できている一方、残念ながらいくつかの課題が発生してしまうケースもあります。

これからセルフサービスBIを導入しようとお考えの方には、セルフサービスBIの概要とメリット、そして導入後に直面しやすい3つの課題を理解しておくことが大切です。

 

セルフサービスBIの誕生経緯

BIツールとは、企業に蓄積されたデータを分析・加工し、意思決定に活用できるようにするためのソフトウェアで、いくつもの種類があります。

セルフサービスBIは、BIツールのうちのひとつです。システム部門による準備を必要とせず、簡単な操作で分かりやすいビジュアルの分析データを表示できるという特徴があります。

セルフサービスBIを理解しやすくするために、まずセルフサービスBI誕生の経緯をご説明しましょう。

BIツール誕生以前から、蓄積されたデータを活用して企業経営に活かしたいとのニーズはありました。1970年代から80年代にかけてこのニーズを実現しようとした動きが、DSSDecision Support System:意思決定支援システム)やSISStrategic users of Information System:戦略情報システム)といわれるアプローチです。ただ、DSSSISの導入コストは高価で、専門家でないとオペレーションができないなどの問題があったため、大きく広がることはありませんでした。

1980年代後半から90年代にかけて、こうした問題を解決するためにEUCEnd User Computing)とDWHData WareHouse)が生まれました。EUCDWHによって、専門家でなくてもデータを活用して意思決定の質を高められる「BI(ビジネスインテリジェンス)」環境が実現したのです。

EUCによって、現場の一般の人々でも、ホストコンピュータからデータを自分の端末にダウンロードして自由に分析・活用できるようになりました。

一般の人々が活用しやすい形式でデータを入手できるようにデータベースを構成したのが、DWHです。しかし、DWHを管理するのはシステム部門であるため、現場でよくあるニーズには対応できるものの、現場一人ひとりのニーズに応えるまでの自由度はまだありませんでした。

この状況を解決すべく、「BIツールの大衆化」の動きが生まれます。大衆化の流れで生まれたのが、システム部門による準備を必要とせず、一般の人々が自ら自由にデータ分析ができるBIツール「セルフサービスBI」だったのです。

BIツールのことをもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

BIツールとは?導入すると何ができる?おすすめツール5選を比較紹介!

セルフサービスBI導入のメリット

セルフサービスBIを導入する主なメリットは、以下の2つです。

メリット1:業務の効率化を推進する

会社で所有する多様なフォーマットのデータや、現場で作成したExcelなどのデータ、さらに外部から入手したデータまで、セルフサービスBIでは、あらゆるデータを組み合わせて分析することができます。大量のデータを簡単に、かつ時間をかけずに扱えるのです。

データのフォーマットを統一させたり、データを転記して新たな表やグラフなどを作成したりする手間を省けるので、業務の効率化が進みます。これまでデータ分析資料を作成するのにかかっていた時間を削減できるので、戦略策定や意思決定などといった考える業務に時間を充てられるようになります。

 

メリット2:新しい発想を誘発できる

セルフサービスBIでは多種多様なデータを利用できるため、データを見ながら思考を巡らせるうちに、新しい発想やアイデアが生まれることが期待できます。従来の発想では適切な仮説を立てられない場合でも、セルフサービスBIで関連データを集めて分析していくうちに、今まで気づかなかった新たな分析視点や仮説が浮かんでくる可能性があります。

新しい発想を誘発できることは、現場で自由にデータを活用できるセルフサービスBIの大きなメリットと言えます。特に、現場が自発的に考えてアクションを起こすことが求められる企業では、このメリットを享受しやすいと考えられます。

 

セルフサービスBI導入後に起きがちな3つの課題

セルフサービスBI導入によるメリットがある一方で、導入目的や運用体制の検討が甘かったために新たな課題が生まれてしまう場合もあります。BI導入後の課題として企業から多く聞かれる課題は、次の3つです。

 

課題1:データガバナンスの低下

ビジネス課題を導き出すためには重要な事柄を精緻に分析する必要があり、現場は社内の重要なデータを自由に利用したいと考えます。しかし、システム部門側が社内の重要なデータを現場に渡すことは、セキュリティ上非常に危険です。現場のセキュリティ環境は、システム部門が重要なデータを管理している環境ほど強固なものではありません。さらに、現場のデータ利用者は必ずしもセキュリティ意識が高いとは限らないため、データを第三者に提供してしまうなどといった情報漏洩のリスクが非常に高くなります。

データの信頼性についても考慮する必要があります。一つのデータに対して、複数名が手元のデータを少しずつ追加する状況が続くと、作成日や追加データが異なる複数バージョンのデータが発生してしまいます。安易にデータの追加や更新を続けていると、結局どれが最新で信頼できるデータなのかが分からず、適切な分析ができなくなってしまいます。

セルフサービスBIの導入前には、データのセキュリティや信頼性を確保するためのルールを十分検討しておくことが求められます。

 

課題2:運用の属人化

セルフサービスBIには、各人が自由にデータを活用できるメリットがあります。ただ、活用方法を社内で共有できていないと、担当者が異動や退職などで変わった際に、他の人がデータをメンテナンスできなくなってしまいます。

この状況が重要なデータを扱う部門で起こった場合、会社にとっては大きなダメージになるでしょう。個人にとって便利かつ快適であることばかりを追求しすぎると運用の属人化が起こってしまい、それに伴って様々な不都合が発生する可能性が高くなります。

 

課題3:展開時のコスト

セルフサービスBIを検討する方々が見落としがちな課題が、展開時のコストです。一部の現場で使われ始めたセルフサービスBIの利便性に注目したシステム部門が全社展開を検討した結果、想定以上の膨大なコストがかかると判明し、導入を見送るケースが見受けられます。

多くのセルフサービスBIは、ユーザー数で課金する契約形態になっています。そのため、ユーザー数が少ない導入初期は低コストで済んでいても、ユーザー数が増えるに従ってコストが膨れ上がってしまうのです。セルフサービスBI導入によって、コストに見合うだけの十分な効果を得られるのか、冷静に比較検討することが必要です。

 

セルフサービスBI導入前に、目的と運用体制を明確にしよう

これらの課題を回避し、セルフサービスBI導入を成功させるためには、導入目的を明確にすることが大切です。セルフサービスBIの機能や導入メリットばかりに注目するのではなく、「セルフサービスBIの導入によって、自分たちが導入目的を達成できるのか」を見極めて、選定を進める必要があります。セルフサービスBIの導入によって解決できる課題はいくつもあるので、自分たちのケースに類似する事例を集めて導入イメージをつかむのもよいでしょう。

セルフサービスBIの導入が目的ではありませんから、他のツールや仕組みによって目的を達成できる可能性があることも考慮しましょう。そのうえでセルフサービスBIの導入を決めたら、事前にセキュリティや展開時のコスト、導入後の運用体制などをできるだけ明確にすることをお勧めします。

セルフサービスBIの選定ポイントは、現場のニーズによって変わってきます。自分たちのニーズを満たすBIツールを選定するポイントや、現場でどのような機能が求められるのか等を具体的に知りたい方は、eBook失敗しないBIツールの選び方 ~社員によるBIツール活用の課題と解決方法~」をぜひご覧ください。

参考:

  「セルフサービスBI」って、いったい何? |@IT

  これで納得! BIツールの歴史と進化|ITトレンド

  「脱Excel」か「まだExcel」か――その選択のポイントとは? |ITmediaエンタープライズ

  エンドユーザーのデータ活用が期待通りに進まない。その理由と解決法は?|日経 xTECH