経営管理のためだけではないBI(ビジネスインテリジェンス)の活用、注目される導入効果

経営管理のためだけではないBI(ビジネスインテリジェンス)の活用、注目される導入効果

BIツール

BI(ビジネスインテリジェンス)システムの歴史は、1980年代の後半からはじまっています。現在までにコンピュータは分散処理、ネットワーク化を経て、ビッグデータやAIの時代を迎えました。現在ではBIは誰でもその機能を使えるようになり、より高度な分析を提供できるようになってきました。今回は、BIの最近の進化について紹介しましょう。

歴史のあるBI、その進化の方向性

経営上の意思決定は、近い将来の会社の命運を分けるものになるかもしれません。そんな重要な決定を経験や勘、売上や利益などありふれた経営データからだけで行っていいものでしょうか。とはいえ、事業に関わるデータは売上やコストのほか、企業を取り巻く環境も含めて取り上げればきりがありません。それらのデータをどうやって収集し、どのような方法で最適な解を導き出せばいいのか、経営のプロフェッションルでも実は難しい仕事なのです。

そのような難題を、それ専門に開発されたコンピューターシステムに任せてしまおうというのがBIです。システム構成は大きく4つに分けられ、分析に必要なデータをその目的に適したように加工し蓄積する「データウェアハウス」、それらを経営分析のためにデータ化する「DSS:意思決定支援システム」、さらにデータを深く分析する「データマイニング」などによるデータ処理、そしてその結果をわかりやすくビジュアル化し、配信する「レポート機能」に分けられます。まずはBIの誕生からこれまでの経緯について見てみましょう。

BIの歴史と方向性

BIへの取り組みは、1980年代から行われていたといわれています。1990年を迎えるころには、経営やデータ分析の専門家でなくても活用できる、経営意思決定のための分析データの入手を目指すことになります。より分析スピードが求められるようになるのと同時に、「経営」「営業」「サービス」「製造」などそれぞれの職務に合わせたデータ分析や、現場担当者レベルでも分析ができる「セルフサービスBI」の時代を迎え、誰にでも実践的にBIが活用できるようになってきました。IoT(モノのインターネット)の普及も含めたビッグデータの蓄積、ディープラーニングで分析力を高度化させていくAIなどとの連係や融合で、BIは今後もさらに進化していく方向にあります。

最新のBIツール、その適用分野

会社の経営で重要なことは、「経営の見える化」です。数値で随時把握することで、計画の達成状況や問題点の抽出が遅滞なく行えます。そのために都度、各部署に指令を出して数値を提出させるのではなく、経営判断のための数値を常に収集・蓄積・分析・提供できるのがBIの優れたところです。

そして、現状を知るだけではなく、仕入れコストの変化から利益率を予測することなどにも適しています。為替に限らず、原材料費やエネルギー費は今後も変動し、企業経営に大きな影響を及ぼします。1年の事業が終わってから原材料コストを見誤り、利益が出なかったということは経営には許されません。しかし、原材料費などが変動するたびに計画を見直すのも無駄な労力です。そのような理由から、BIは適切な利幅を確保するための計画立案などに欠かせない予測ツールとなるわけです。

マーケティングや顧客分析に

売上はマーケティング活動の集大成です。結果である売上だけを見ていても、有効な手の打ち方はわかりません。製品ごとのデータを日時や地域、競合製品との関連などから分析することで、売上パターンや拡大方法などが見えてきます。その結果にもとづいた営業活動を展開し、その効果を測定するためにまた分析をします。この繰り返しをしないと、売上はそうは簡単に伸びません。顧客から寄せられた意見や要望などの声(テキストデータ)と売上データとをデータマイニング機能でクロス分析させることで、新しい発見や不振の原因を見つけるなどもひとつの方法です。

情報の可視化と共有化

このようにデータ分析による数値化で、現状と将来を可視化することにBIの真価が発揮されます。さらに現在では企業の各部署の担当者ベースでも使われるようになり、それぞれが分析し、その結果を共有することで組織全体の意思決定力、問題解決力などを高められるようになってきました。BIは企業経営者のためのツールという考え方は、だいぶ以前の話なのです。

BIツールの機能を考える、導入に向けた考察

例えば、BIツールのなかの「OLAP Online Analytical Processing)分析」機能は蓄積されたデータベースを分析する機能ですが、社内のさまざまなデータベースに実施することができます。しかし、分析機能は多岐にわたるので、導入にあたってはどのデータをどのように活用するかを事前に考えておくことも必要です。データはそのまま使えるのではなく、データマイニングなどに適した形式に整備するデータクレンジングの過程や、現場の裁量で独自に取得していた情報を分析に適した形で入手するためのルール作りや入力フォーマットの見直しなども求められます。データが増えれば作業もそれだけ増えますので、現場の協力がもっとも大切であり、その指導も一緒に考えなければなりません。経営層とIT部門だけで活動するのではなく、全社を挙げてデータの抽出と分析に取り組む体制をつくること、そして各部門にBIツールの活用を啓蒙することがポイントです。

目指すのは全社でのデータの活用

出力されるデータやその結果をまとめて瞬時に把握できるようにディプレイ表示を作り込める「ダッシュボード」などの設定や、レポーティング(報告書)のスタイルについても、それぞれの部署が使いやすいようにカスタマイズすることも合わせて考えたいものです。現場の担当者が分析を行えるのみならず、それを社員の一人ひとりにまで伝えられる表現力も大切であるということです。

冒頭述べたとおり、BIはもはや経営者だけのものではありません。導入に当たっては経営判断とIT部門の活動だけではなく、データを集め、そしてそれを業務に活用する各担当と足並みをそろえることが、現代的なセルフ型BIの活用で一番重要なポイントといえるでしょう。

参考:

BI 【 Business Intelligence ビジネスインテリジェンス|IT用語辞典 e-Words

大手企業のBI導入率は8割、利用者は2割未満--ガートナー調査|ZD Net Japan